一杯の龍井茶
現在、イギリスから離れて中国の蘇州に留学している。
蘇州は水が豊かな土地で昔の趣の残る観光地があちこちにある。
日本人には馴染みがないが何も気にしない感じの中国の雰囲気が残るいい街だ。
今日は同里の南園茶社にてお茶をいただいた。
頼んだのは龍井茶の30元のもの。この日の昼食の値段と同じで少し高いが、その額に見合った美味しいお茶だった。
南園茶社は見晴らしのいい茶館で、特に二階(二楼)の窓辺からの眺めは素晴らしい。
そこへ、昼下がりの涼しい風が入ってくる。なんとも贅沢な時間の使い方だと思った。
建築も古く、しっかりした作りだ。近くにおしゃれなカフェもあるが、ぜひ同里に来たら寄ってみるべきだと思う。
碧螺春という緑茶も少し味見させてもらったが、とてもいい香りがして苦味と甘味のバランスが最高な一杯だった。碧螺春は1杯50元だったが、これも満足のいく値付けである。湯を継ぎ足せば、何杯も飲めるのでそこまで高くないのかもしれない。
店の1階では実際にお茶を量り売りしてくれる。私の友人が購入していたが、碧螺春の1両(50グラム)で100元という。良心的とまではいかないが、なかなかの適正価格だと思う。
初めてお茶がこんなにも美味しいものだと思った。
これは「安かろう、悪かろう」の中国産品質のイメージを大きく覆す。
そもそも戦乱の時期を経ながら、4000年もの歴史を積み上げてきた大国、「中華」
なのである。
その重みは、ここ100年で瓦礫と化してしまった。
そうした苦難の歴史からやっと這い上がろうとしているのである。
「中華民族の復興」というスローガンにはそうした意味合いがあるのではと推測する。
この国の人は一杯の茶を楽しむ繊細な心の持ちようであるということは意外と知られていない。ただ、お茶や書、建築、思想史を鑑みるに、この国の先達がどれほど優れた精神性を持っていたか思い知らされる。
清朝の時代に戻ればいいとは考えてない。多分、そうした文化を謳歌した王朝や富裕な人々と庶民の差は相当のものであったと思うし、(だからこそ、共産党が支持を得た)
他にも女性差別などの種々の問題があったと思う。
ただ、日本のようにある程度、生活に余裕が出るくらい、中国国民が豊かになってほしいと切に思った。
そうなった中国は、文化大国であり、経済大国であり、地上の楽園となれるに違いない。