1-2企業形態の展開
『よくわかる企業論 第2版』
1規模の拡大と支配の統一
大規模化
規模の経済
生産・販売の規模を拡大させることで単位あたり費用が減少すること。
ここでの「単位あたり」とは主に重量・個数といった計量単位を指す。
単位あたりの費用減少は
①固定費用の拡散効果
②総費用の増加率が規模拡大の割合よりも小さくなること
③専門化と分業の利益
④大量生産・販売に適した技術の利用
の4点によってもたらさられる。
①固定費用の拡散効果
固定費は生産・販売数量に関わらず一定。
単位あたり費用は総費用(固定費と変動費の和)を生産・販売数量で除した者であるとすると、分母の数量が大きくなるにつれて、単位あたりの固定費は減少する。
②総費用の増加率が規模拡大の割合よりも小さくなること
生産・販売規模を拡大するにつれて総費用の増加のペースが緩やかになること。
例: 大規模購買によって売り手(仕入れ業者)への交渉力を増すことなど。
③専門化と分業の利益
規模の拡大に伴い分業化が進む。
個人・企業の活動範囲が限定されることにより、学習効果が働くため生産・販売にかかるコストが低下できる。
④大量生産・販売に適した技術の利用
生産・販売が大規模化すれば、小規模施設に導入される技術とは異なる大規模投資が可能となる。
例:大規模なマテハン施設や自動化された大規模工場などに投資できる。
→単位あたりのコストを下げられる。
しかし、企業規模が拡大するにつれて経営意思決定が難しくなる。
(株式会社化することで資本を無制限に獲得できるが、意思決定の統一は困難になる。)
2中世イタリアにおける企業形態の展開
中世イタリア:ソキエタス(societas)
複数の個人が出資、それぞれの個人が無限責任を負う。
出資者全員が経営の意思決定に参加(合名会社的)→出資者を拡大できない。
コンメンダ(commenda)
無限責任者の経営支配の元、有限責任者分の出資だけ資本を拡大することができる
現代における(合資会社)
3株式会社
企業の資本集中と経営の意思決定の統一の両立を可能にすることを目指したのが株式会社である。
出資者を全て①有限責任とし、②資本を少額の株式に分割すること(資本の証券化)で資本集中機能を飛躍的に高めることができる(1600年に英国の東インド会社において初めて登場する)。
意思決定の統一は理論上、株主総会を通して実現される。議決権は一株につき、一票与えられ、多数決で企業の意思決定が行われる。
しかし、無限責任出資者がいないので、誰が経営の責任を引き受けるかが課題となる。
株式会社では株主総会、取締役会を設置することでそれらが経営の責任を引き受ける。
経営を担当する取締役は必ずしも株主である必要はなく、株主総会によって任命された経営を専門に行う専門経営者が経営を担当する。
このように資本の所有者と経営の執行者が異なる人物になることが所有と経営の分離である。