3-2大規模株式会社の経営者
3-2大規模株式会社の経営者
前回では所有者支配から経営者支配へという大まかな流れを辿りましたが
今回は、経営者支配についてより詳しくまとめていきます。
1株式の高度な分散と株主会社の支配
発行済株式の50%を所有することで企業の支配権を得ることができる。
50%超え(過半数)の株主を所有することで株主総会での普通決議を単独で成立可能になる。(取締役の任免、監査役の選任、会社の大部分に関わる意思決定を自ら行える。)
現代では企業の株式は高度に分散しているため、50%以上も所有して支配するのは困難。(巨大な資本を持つ一部の機関投資家の荒技として敵対的買収の際には50%以上を獲得することもある。その場合は株式公開買い付け(TOB)が行われる。)
従って、ある程度まとまった株主は50%に満たなくても、他に大株主が存在しない場合には、5%ほどから企業の支配が可能である。
こうして少数の株式所有者が企業を事実上支配できる形態を少数所有支配、少数持ち株支配という。
ここで、支配権について
前回もまとめたように、「支配」とは、バーリーとミーンズによると、「経営者を任免する能力」のことを指す。しかし、今日的には、より広義に定義するのが一般的であり、「会社の広範な意思決定を行う力」と定義される。
2経営者支配
経営者支配とは、大株主でない専門経営者が取締役の任免などの支配を行うことができること。
具体的には、
①委任状の収集機構の掌握
②取締役の任免
③取締役会の意思決定を掌握
の3つが含まれる。
ここで、委任状とは
経済系のドラマで委任状取得合戦が行われるまさにアレであり、
株主総会に参加しない株主が株主総会での議決権を代理人に委任することができる。
①委任状の収集機構の掌握
経営者は委任状を収集する機関を掌握し、過半数の議決権を経営者が持つため、
たとえ経営者が過半数の株を持っていなくても株主総会の意思決定を掌握できる。
②取締役の任免
取締役は株主総会において選出されるため、経営者が議決権を行使することで
経営者の意のままの取締役を任免できる。
また、現役の取締役が次期取締役を指名し、株主総会で「承認」されるのが一般的。
③取締役会の意思決定を掌握
経営者によって取締役の任免が可能となるため、経営者に都合のいい人物が選ばれる可能性が高い。経営者は取締役の人選を通して取締役会の意思決定を掌握することが可能となる。
3法律と現実との乖離
バーリーとミーンズの指摘
1970年のアメリカ→企業の不祥事が相次ぐ。
原因: 取締役会の機能不全。
そもそも、企業の所有者は株主であり、その権利は私有財産権として認められているが、それが蔑ろにされている。
つまり、元々の権利委譲は
株主総会→取締役会→経営者であるが、経営者支配段階の企業ではこれがみられない。
経営者が持つ大権は誰から付与されたものか、またそれを行使することの正当性はあるのか、問題視される。
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