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【第13章】ゼミナール・マーケティング入門 第2版 

【第13章】ゼミナール・マーケティング入門 第2版 

 

①交換パラダイムが適していると考えられる業種、関係性パラダイムが適していると考えられる業種をそれぞれ一つずつ挙げて、その理由を説明しなさい。

交換パラダイム【不動産業界】

 ここでは居住用の不動産売買を行う不動産業者を対象に考察する。一般的に居住用の不動産を購入する機会は人の一生のうち限られた回数のみである。不動産企業からすれば、顧客との関係は一回きりの購買であると考えるため、購買後も継続して関係性を維持していこうとはしない。顧客にとっても、購買時に最も重視することは、価格や間取りや立地などの不動産としての性質であり、決して関係性から生まれる補完的サービスが重要ではない。従って、不動産業界では関係性パラダイムよりも交換パラダイムをより重視した方が良いのである。

関係性パラダイム【和装業界】

 関係性パラダイムとは、交換に先立って関係性を構築し、長期的な顧客関係を維持することに重点を置いたマーケティングである。少々古い商法であるが、着物は数百万円以上することもあるため、呉服店(着物小売店)は着付け教室やサービス旅行を通してまず顧客(主に富裕層)と関係性を作り、そののちに製品の売り込みを行うこともある。また、富裕層向けでない一般的な顧客では、購入時に長期的なローン契約を作成し、ローンの完済時に同様の展示会などのイベントで顧客を呼び戻すといった「長期的継続的な」関係性作りが行われている。

また、着物は一代だけでなく、親から子へと受け継がれることも多く、受け継ぐ度に直していくこともある。そうしたケースを想定して、呉服店の中では直しのサービスを行う店舗も存在する。呉服店は既存のサービスで仕立てまで行っており、直しのサービスを追加しても範囲の経済が働き、コストを抑えられるほか、顧客との長期的関係を築ける。

さらに、ゆかたの着付けからのちには正絹の帯を買うように仕向けるアップセリングや、茶道や華道の道具とセットで着物を販売するクロスセリングも行われているのではないかと推測される。

以上のように和装業界では長期的な顧客関係を志向する。しかし、上記のような「商法」は必ずしも倫理的とは言えない。この和装業界の例にあるように関係性パラダイムが必ずしも顧客志向のマーケティングではないことに注意するべきだろう。

②顧客あるいは取引先との長期継続的な関係を実現している企業の事例をひとつ取り上げ、そこでは、どのようなウィン・ウィンの関係が実現しているかを分析しなさい。

【CGC】

 シージーシージャパン(CGC)は全国の中小スーパーが加盟する共同仕入れ機構(ボランタリーチェーン)である。中小スーパーがCGCを通してまとまって仕入れをすることで、メーカーに対して大手と互角の強いパワーを発揮し、豊富で安価な品揃えが可能となっている。

加盟店同士の依存的関係

CGCでは加盟店の在庫状況をPOS端末から本部サーバーに集積・分析し、各店舗に提供している。こうした大規模な顧客データを把握するITの導入は中小スーパーでは難しい。また、全国に物流センターを設けて効率的な物流ネットワークを作っている。2011年に東日本大震災が起こった際にはこの物流網のおかげで、遠く離れた九州や東海の物流センターからも被災地のスーパーに素早く配送することで、大船渡市のスーパーでも震災翌日から営業を開始している。

顧客関係の維持

大手スーパーはプライベート・ブランド(PB)を持つことで店舗へのロイヤリティを高めている。一方で、中小スーパーはまとまったロットを確保できないためPB開発は難しい。そこで、CGCの下ではCGCの本部がPBを開発し共同仕入れすることで中小スーパーもPBを持てるように工夫されている。また、商品券や「CGC Group cardポイント」もグループ内で統一されるなど、顧客に対するロイヤリティ・プログラムをCGCグループで統一し、顧客と継続的な関係の構築と顧客情報の獲得を目指している。

以上のように中小スーパーはCGCに加盟することで、豊富な品揃えや顧客分析ができる一方で、CGCと取引関係があるメーカーにとっては大口で安定した受注が見込める。顧客との関係では、中小スーパーであっても価格に訴求したPBが購入可能になったり、全国で共通のロイヤリティ・プログラムがあることで全国のどこでもお得に購入できる。このようにCGCでは加盟店とメーカー、加盟店と顧客の両方との長期的関係の構築を実現し、ウィン・ウィンの関係が実現している。

顧客満足度が低くても、顧客関係が長期継続化する場合がある。なぜ、そのようなことが起こるのかを説明しなさい。

 たとえ顧客が製品に対して態度的ロイヤリティを持っていなくても、スイッチングできないという行動を抑止する行動的ロイヤリティを形成させることは可能である。

 第一に顧客のスイッチングコストが高い場合、顧客は容易に他社の製品に乗り換えることが難しくなる。携帯電話の違約金制度のように契約を途中で破棄した場合、違約金の発生が顧客の移動障壁となり、行動的ロイヤリティが形成される。

 第二に、コンコルド効果(埋没費用効果)も行動的ロイヤリティを生む。金融商品など、前もって投資が必要な製品では、顧客は現在の状態にたとえ満足していなくても今までの投資を埋没するような行動には出にくい。

 第三に売り手が少数で寡占された市場では、買い手のスイッチングは行われにくい。寡占化した市場で企業は顧客満足よりも他社との協調行動を行いやすく、それによって製品やサービスが同質化したものとなるためスイッチングが起こりにくい。

 第四に代替品が存在しない場合は買い手のスイッチングが起こりにくい。政府の規制や市場参入の障壁が高い場合、代替品は発生しにくいため、そのような場合において顧客は現在、選択している製品からスイッチングすることは難しくなる。

 第五に他社製品と互換性がない場合、顧客は当該製品に満足していなくても他社製品に乗り換えようとはしない。たとえば、Apple社はiTunesでデバイスに音楽を取り込むが、音源のファイル形式を 「Apple Lossless」と呼ばれる同社の製品でしか再生できないような形式にしたため、他社製品にする際にはファイル形式を変更する手間が発生する。互換性がない場合、こうした手間が発生するため顧客は当該の製品に満足していなかったとしても使い続けることになる。

 第六にブランド間の差異が認識されていないとき、顧客は慣性的(Inertia)に購買を行うため、顧客関係が長期化する可能性がある。(満足化理論を基にすれば顧客は当該製品に満足していることになるのでこの問いには当てはまらない?)

 

参考文献

網倉 久永・新宅 純二郎(2012)『マネジメント・テキスト 経営戦略入門』日本経済新聞社

池尾 恭一・青木 幸弘・南知 恵子・井上 哲浩(2010)『マーケティング有斐閣

石井淳蔵・栗木契・嶋口光輝・余田拓郎(2013)『ゼミナールマーケティング入門第2版』日本経済新聞社

「データベース性能の限界を超える」『日経コンピュータ』2006年3月6日 62-69頁。

「被災店舗救えCGC一枚岩」『日経MJ』2011年5月23日 1頁。

「PBの衝撃 ニーズ高い低価格品開発」『日経流通新聞』2009年8月16日7頁。