さんぽ学派

大学生のあれこれ

日本の高度経済成長とはなんだったのか。

学期末のエッセイテーマとして

アメリカの冷戦時の貿易政策について書いた。

書きながら気になったのだが、

日本の高度経済成長期とはなんだったのか。ということである。

よく、「焼け野原から復興した」というけれど焼け野原から復興するのは

そんなに容易ではないと思う。比べてはいけないけれど第二次世界大戦後東南アジアだって焼け野原から復興して中所得国という現在があるわけで、

つまるところ、焼け野原という0から1を作り出すのがそんなに言葉通りに易々とできるのかということである。

いやいや日本人は真面目でよく働くから…と言われればそれまでだが、

実は違う要因で日本は復興したのではないかと私は密かに思っている。

まだデータが揃っているわけではないので憶測にすぎないけれど…

 

高度経済成長の要因について日本語版Wikipediaには

この経済成長の要因は、高い教育水準を背景に金の卵と呼ばれた良質で安い労働力第二次世界大戦前より軍需生産のために官民一体となり発達した技術力、余剰農業労働力や炭鉱離職者の活用、高い貯蓄率(投資の源泉)、輸出に有利な円安相場(固定相場制1ドル=360円)、消費意欲の拡大、安価な石油、安定した投資資金を融通する間接金融護送船団方式、管理されたケインズ経済政策としての所得倍増計画政府の設備投資促進策による工業用地などの造成が挙げられる。

と書いてある。

つまり、何と言っても要因の焦点は日本人と日本政府の政策にあると言える。

 

一方で英語版WikipediaのBackgroundの欄にはまず第一に

This economic miracle was the result of post-World War II Japan and West Germany benefiting from the Cold War.[dubious ]It occurred chiefly due to the economic interventionism of the Japanese government and partly due to the aid and assistance of the U.S.[1] After World War II, the U.S. established a significant presence in Japan to slow the expansion of Soviet influence in the Pacific. The U.S. was also concerned with the growth of the economy of Japan because there was a risk after World War II that an unhappy and poor Japanese population would turn to communism and by doing so ensure that the Soviet Union would control the Pacific.

この後に上記の日本語版と似たような記述がある。

この英語版のWikipediaにおいては経済成長の主な要因は冷戦構造にあるということである。

つまり、イデオロギー的に中国、ロシアといった共産主義の最前線に晒される日本が

共産主義化するのを何が何でも阻止したかったという一面がある。

アメリカの自由貿易の理論にも似た部分が多分にあって、共産主義圏の押さえ込みがこの時期のアメリカの貿易、もしくは外交政策に大きな影響を与えている。

日本語版の記述にはこの重要な要素が一切記載されていない。

確かにWikipediaなので言語によって書き手が違うので、それぞれの書き手の主観が反映されるとは思うが、当時の世界情勢から考えるとどうやら英語版の方が正しいように思える。

米国にとって日本は自由主義を宣伝するための格好の国であったのではないだろうか。

民主主義がいかに国を復興させるか。モデルケースとして利用したとも考えられる。

大陸から見れば、資本主義と民主主義の楽園の国として

日本という国は存在していたのかもしれない。

ではなぜ逆に日本ではこうした事実に触れないのか。

それは日本独自のアイデンティティの構造にあると思う。

日本人は戦前にあった天皇の絶大な権威と植民地政策という謂わば帝国主義アイデンティティの重きを置いていたのではないだろうか。

そうした政策が自国が他国よりも優れているということに根拠を与え、日本人としての矜持を持たせ、それが日本人が多民族より優れている、つまりは自分たちは多民族よりも優れているという感覚を持たせた。

しかしながら、敗戦により、広大な植民地と天皇制の権威の失墜によって日本人は自らのナショナルな部分を失ってしまう。

 

そうした混迷期の中で、日本は奇跡的にもしくは日本人という特質のため復興した。

というなんとも心地の良い理由が好まれるのも納得がいく。

また、時代が下るにつれて、そうした輝かしい歴史はよりその修飾の度合いをましていく。

とくに経済的に失速し、失われた20年を経験したあたりから急速にそうした脚色が増していく。

 

こうして日本復興神話なるものが完成したと私は思っている。